47 さようなら、マルグリッド

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 泥だらけの顔で池の淵に足をかけていたマルグリッドは「不細工め!覚えていろよっ!」と捨て台詞を小さな声で吐いた。  私が振り返ると、途端に子ブタが現れていた。私があげた腕輪をはめた泥だらけの子ブタだ。可愛いと言えなくもない丸々と太った子ブタだった。 「その腕輪は取れませんわ。殺人を犯そうとするほど彼女が殺意を抱くと腕輪が教えてくれるのです」  私はにっこりと微笑み、子ブタになったマルグリッドに皆が悲鳴をあげている中、ジョセフに合図をして歩いて帰ろうとした。ジョセフが腕をつかんでいた使用人は力無く腰が抜けたようにへたへたと地面に座り込んだ。 「マルグリッドなの!?」 「お前はマルグリッドか!」 「マルグリッド、悪い考えは今すぐにやめなさいっ!」  伯爵と伯爵夫人と兄のポールが子ブタに必死で話しかけていた。素直に反省すれば元の姿に戻るが、彼女が犯罪を伴う強烈なあくどい悪巧みをした瞬間に再び子ブタになるだろう。  さあ、サミュエルの待つ馬車まで戻りましょう。慌てて水の入った桶を抱えて出てきた侍女から私は水を少しわけてもらった。その水で手についた泥を綺麗に落とした。 数日経って彼女が十分に反省したら、今後強烈な悪巧みをしたら子ブタではなく可愛いウサギになるはずだ。武士の情けだ。  気分は爽やかだ。これで、私の死亡フラグのうち一つはクリアしたのではないか。  純斗ことジョセフと私はハイタッチした。  余談だが、ジョセフが持ち帰った鉄製フライパンにはベスが大喜びしてくれた。料理の改善にも貢献できたようで何よりだ。
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