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私はそんなことを考えながら、サミュエルの馬車で安心してバリドン公爵家への帰路に着いた。父のバリドン公爵は結婚式の延期を陛下に伝えたはずだ。ヒューはそのことを了承するだろう。
私は日記に心の鍛錬に励む目標と共に、チョコレートの作り方、コーヒーの淹れ方、バニラを使った焼き菓子の作り方について記した。料理人ベスにも同じレシピを伝えて、チョコレートや焼き菓子の販売についても考えていると伝えたのだ。
私は純斗に感謝していた。一緒に行くと言われた時は唖然としたが、純斗がいなかったら死亡フラグが立ったまま、うまく立ち回れなかった可能性があったのだから。
帰ったら、お礼をしなければと私は思ったまま、馬車の揺れが気持ちよくなって私は眠ってしまった。ゴツンと馬車のドアにぶつける前に、ジョセフの肩にそっと自分の頭が優しく倒されたのを感じた。
『純斗は優しい』と思いながら私は意識を手放した。
◆◆◆
目を開けると、潤斗の肩に寄りかかったまま、私はフードコートのソファ席で寝入っているところだった。ハッとした。戻ってきたようだ。
午後の授業には間に合う時間だろうか。私は目の前で心配そうに私たちを見つめているヒューと魔導師ジーニンを見つめた。魔導師ジーニンは16歳の時に宮殿で見たままの紫のマントを羽織っている。ヒューはポロシャツにスラックスというリラックスした出立で、相変わらずの美男子っぷりだった。
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