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「マルグリッドはもう大丈夫よ。彼女は黒だったわ」
私は2人に開口一番宣言した。その時、純斗は目を覚ました。隣の純斗の顔を見上げた私はハッとした。彼は明らかに泣いていたから。
「どうしたの?何かあった?」
私とヒューと魔導師ジーニンが純斗の顔を覗きこむと、彼はゆっくりと目をしばたいた。放心状態のようだ。
「いや……初めての経験だったからさ。なんかこう……」
純斗は戸惑ったように話した。
「わかるっ!その感じ私も分かる」
私は大きくうなずいた。涙は流さなかったけれど、私も最初はかなり戸惑った。ただ、私は元々あっちの世界の住人だ。戸惑いは少ない方だと思う。純斗は慣れない中世の従者をやらされて、思いの外大変だったのではないだろうか。
「まあ……そうだね」
純斗は言葉少なにぼそぼそと話した。純斗らしくなかったが、こんな経験は普通はしないだろうから、私たちはあまり気に止めなかった。
「次は18歳でいいかもしれない。ほら、この写真を見て」
私はスマホで撮った写真を見せて、大量の矢で殺される寸前だったことと、泥だらけのマルグリッドと、子ブタになったマルグリッドの写真を見せた。
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