49 レキュール辺境伯エリオット

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俳優の純斗がうちの大学の学生だという噂は、その日あっという間に学内に広がった。ジョセフになりすましても違和感がなかったのは、俳優力のなせる技かもしれない。  アパートの純斗の部屋に合流した私たちは、次の手を考えなければならなかった。  大家さんが用意した炭酸入りレモネードは、今日も美味しかった。暑い日にぴったりで、純斗と私はごくごく喉を鳴らして飲んだ。ヒューもサミュエルも美味しそうに飲んでいたが、魔導師ジーニンだけは炭酸が苦手だと言って遠慮して、純斗が用意したアイスコーヒーをいただいていた。 「まず、マルグリッドは大丈夫になった。でも、彼女一人で聖女を処刑に持ち込めるわけがない」  純斗は腕組みしてホワイトボードを睨んでいた。私は少しドキドキする思いで純斗の一挙一足等に飛び上がりそうになる程だった。レモネードのグラスを純斗から渡されて指がかすったぐらいで赤面してしまった。指の体温がとても温かった。 「ヒュー、誰か聖女は無実だと訴えた人がいませんでしたか?」  純斗はヒューを見つめた。 「あ、そういえば!」  ヒューは眉間にシワを寄せて考え込んで、ハッとしたように叫んだ。
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