49 レキュール辺境伯エリオット

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「でも、君はそんなことをしていないんだろう?レキュール辺境伯とは何もなかったのだろう?」  ヒューは苦悶に満ちた表情を浮かべた。喉がヒクヒク震えている。私はあの時否定した。でも、ヒューは信じてくれなかった。私の指にはヒューのくれたダイヤの指輪が光っている。  それはもう過去のことで、過去をやり直すために集まっている。ヒューは反省して泣いて謝ってくれた。私は誰かに仕返しをするためではなく、ヴァイオレットの人生を救うために頑張っている。私は今度はヒューと結ばれて幸せの絶頂を感じた。結婚を申し込まれた時を上回る女の幸せを感じた。マルグリッドが真っ黒なのを確認して、確実にやっつけた。困っていた学費も払えた。何もかもが最高だ。そう、最高なのだ。全てが最高なのだ。  かつて最愛だった人に再び恋して体の関係を結んだ。大切な初めてを捧げた。  でも。マルグリッドに取られるという思いがなければ、私はその行動に出たのか自分でも自信がない。  とてつもなく最高で醜悪な気がする。私に婚約破棄をあれほど強く言い渡した張本人と寄りを戻した?  私の心を再起不能なレベルにズタボロに傷つけた人とよりを戻した。
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