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魔導師ジーニンは私とヒューを交互に見て、心配そうにしている。沈黙を破ったのは純斗だった。
「もう一度戻ってみよう。気になることがあるんだ。レキュール辺境伯領と隣国のあの男が気になっている」
「カール大帝の弟のこと?」
「そうだ」
「その方がいいかもしれません。マルグリッド一人であの騒ぎを起こせるとは思えないですし」
「ジーニンもそう思う?」
「えぇ、ヴァイオレットお嬢様を完全に救ったと確信が持てるまでは予断が許されないと思います」
「ならば、決まりね。17歳でいいかしら?」
「良いと思いますよ」
こうして、純斗と私はまた戻ることになった。明日の朝、アパート前のブルーリバーとピンクリバーのスーパートレニア カタリーナの涼やな花の前で再集合と決まった。
ヒューは何かを言いたそうだったが、黙って私たちは解散した。サラリーマンの佐々木さんが帰宅するのに偶然合って、大家さんも2階のおばあちゃんも一緒になって私たちは雑談を交わした。
純斗のことは皆分かっていたのだろうと、私がこの時知った。彼が有名な若手俳優だと知っていて、皆そっとしてくれているのだと悟った。
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