49 レキュール辺境伯エリオット

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 私の写真を狙っている近所の例の中学生がやってきて、スマホを構えたので私は「コラッ!」と追い払った。 「聖女なら何かやってみてよー!」  男子中学生はそう言って走ってどこかに行った。  いつの間にか私と純斗の二人だけがアパート前に残っていた。  なぜか純斗はアパートの向こうの空の方を見ていた。少し悲しげな目だと思った。そういえば、純斗は人気俳優だったなんて一言も言ってくれなかった。私がドラマや映画を見る暇もなくバイトに明け暮れているのが問題なのかもしれないけれど。 「仕事、頑張っているんだね」    私は純斗を心底えらいと思った。すごいと思った。 「すごいよ、今日は学内の女子がみんな騒いでいたよ。純斗は人気が凄いんだね。頑張っていてえらいよ。尊敬する」  私は純斗に力強く微笑んだ。 「好きだと言ってくれて本当に嬉しかった。意識してしまって挙動不審になってしまって本当にごめんなさい。これは私が未熟なせいだから」  私はそう言って純斗に頭を下げた。 「謝んなって。俺の気持ちは言ったから。わかっているならいいよ」
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