49 レキュール辺境伯エリオット

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 純斗はそう言って、優しい目をして笑った。いつの間にか、私と純斗の間には同志のような絆が生まれていたようだ。ただ、私はもしかすると、ヒューに惹かれながら、純斗にも心惹かれているのかもしれない。最低だ。私は赤らめた顔を見られたくなくて、とっさに後ろを振り向いて、サミュエルのフェラーリを探した。 「馬車じゃなくて、フェラーリだとはサミュエルも出世したもんだ」  純斗はぼそっとつぶやき、私たちが思わず吹き出した。私たちはそれぞれ自分の部屋に戻った。  私はついでに王立修道院の聖女養成機関でちゃんと修行を積んでいるか、自分の状況をチェックしたいと思っていた。心の修行も必要だ。私は恋人に振られたぐらいで力を失うような偽物の聖女であってはならない。私は成長しなければならない。私は今度こそ、何事にも動じずに、自分の力を全うできる人物に成長する必要がある。感情に振り回されてはならないのだ。  私に必要なのは、悲しみと怒りのコントロールだ。
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