50 純斗Side エリオットSide

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 俺はこの時、ルノーに見つかった。追いかけてきたルノーに、秘密の密会を目撃したとして刺された。マルグリッドはヒュー王子の婚約者になっていた。だから、髭面のルノーは全てを理解した俺が邪魔だったのだ。死んだから異世界転生できたようだ。魔導師ジーニンはレキュール辺境伯にも異世界転生アルゴリズムを使ったのだろうか。  俺は悲しみの辺境伯と呼ばれていた。ルノーに刺された時、地面に倒れて仰向けになると、灰色の空が広がっているのが見えた。俺の最後の記憶はどこまでも広がるその灰色の空だ。聖女のヴァイオレットの声がふわりと聞こえた気がした。  悲しみの辺境伯よ、さようなら。  秋の一陣の風に混じって聖女の声が聞こえたような気がした。  最愛の人、また会えたなら、今度こそ君を救おう。  俺は大好きな人を救おうと決めた。国王陛下が俺から買い上げて聖女にくださった領地はとてつもない資源が埋まっていた土地だったのだ。一国の富を遥かに凌ぐ富が生み出される土地だった。  戻ったら、エリオットに教えたい。まだ間に合うなら、ノー・ガクセン・ハンリヒの悪事を早めに教えよう。エリオットも聖女ヴァイオレットも多分ヒューも救えるだろう。    
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