51 新たな王位継承者 ハリー執事Side

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 私はバリドン公爵家に仕える執事のハリーだ。  モートン伯爵領の広大な森でヒュー王子が落馬したと連絡が来て、聖女であるヴァイオレットお嬢様が駆けつけて数時間経つ。ジョセフがついて行った。  我が国ボアルネハルト王家が神経を尖らせているのは、ラントナス家の王位継承者になる可能性があるレキュール辺境伯だ。彼は母方の血統により、ラントナス朝の最後の王位継承者になってしまう。つまり、レキュール辺境伯は、隣国のとてつもない大国ハープスブートの王になり得る存在となる。この噂が出回った時は大騒ぎになった。  お嬢様がレキュール辺境伯領で一晩行方が分からなくなったことがあったが、その件で王家はかなりピリピリしていた。だが、お嬢様は知らないことだ。なぜ、レキュール辺境伯領の再開発計画にこれほど皆が神経を尖らせるのか、理解していないようだ。  私からこのことを申し上げるべきか迷う。ブロンドの髪の毛を無造作にくしゃくしゃにして、お嬢様と話しているレキュール辺境伯を見た侍女のアデルはすっかりのぼせ上がっていた。
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