53 ヒュー王子の骨折 魔導師ジーニンSide

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 私の本当の年齢は36歳。しかし、普段は魔力で若作りをしている。最近、王立修道院でヴァイオレットお嬢様は私の本当の姿が見えていると知った。力一杯仕事をしようとすると、余裕がなくなり、私が見せている31歳などではない、よれよれにやつれた姿が現れる。36歳より遥かに年老いて見えるはずだ。今の姿はまさにそれだ。ヒュー王子を救うために尽力しているつもりが、全く歯がたたなかった。  私の家系は代々、ボアルネハルトのヨークトシャーナ家に仕えている魔術師の家系だ。祖父の力が最も強かったと言われているが、私と父はそれほど力が強くはない。だからこそ、努力に努力を重ねて術を磨いてきた。代々仕えてきた忠誠心は揺るがない。  私は自分に算式の才能があるかもしれないと自負している。スキルの下地となる力は弱いが、算式により、新たなアルゴリズムが作れた。錬金術も所詮は算式だ。  秘密の婚約者であるヴァイオレットお嬢様を呼びに、既にバリドン公爵家には使いの者を出した。聖女様なら、すぐにヒュー王子を救おうと駆けつけてくれるだろう。
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