53 ヒュー王子の骨折 魔導師ジーニンSide

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 努力し続けないと何者にもなれなかった私などに比べて、才能と資質に恵まれたヴァイオレットお嬢様は素晴らしい存在だ。私は王立修道院でよく訓練に付き合っていた。彼女は気さくで話しやすかったが、未来の夫となるヒュー王子との間には、まだ距離があった。 「元となる力も大事、努力はもっと大事、けれども一番大切なのは心の力よ」  ヴァイオレットお嬢様は常々私にそう言った。ご自身に言い聞かせるようにだ。17歳でありながら、私の師匠ともお呼びしたいほどの方だった。  モートン伯爵家の美しいご令嬢たちが、ヒュー王子に魅力をアピールするためにおそばを離れまいと懸命に頑張っており、私は彼女たちを遠ざけるためにもヨレヨレになった姿で、ヒュー王子のそばで粘っていた。 「早くヴァイオレット聖女様、お助けにきてください」  思わず心の声が漏れ出てしまう。
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