54 再会と喪失 ヴァイオレットSide

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 3回目に戻った私はサミュエルの馬車でモートン伯爵領に急いでいた。17歳だ。ヒュー王子が落馬したので、聖女である私に至急救護の助けを魔導師ジーニンが求めて来たのだ。純斗になったジョセフもついてきてくれていた。  ジョセフが前方を指差して叫んだ 「辺境伯だ!」  私はハッとして馬車道の先を見た。確かに、私が知っているレキュール辺境伯のエリオットだ。ブロンドヘアも何もかも当時の印象のままだ。私はこの時、ジョセフこと純斗がなぜ彼に一早く気づいたのか分からなかったが、エリオットに出会えた懐かしさでそんなことはすぐに忘れた。  私は馬車の窓から顔を出して、向こうから歩いてやってくるエリオットに呼びかけた。手を振る。  私を見つけたエリオットの表情がパァっと光り輝くように明るくなった。彼は非常にリラックスはしているが、紳士的な格好をしている。前回はレキュールの地でしか彼にあったことがなかったはずだったのに、都の方まで足を伸ばしているようだ。 「ちょうどあなたの家を訪ねるところだった」  エリオットは息を切らして走ってくると、そう馬車の外から声をかけた。私たちの乗るサミュエルが御者する馬車とエリオットが佇む道の端には、もう1台の馬車が通れるほどの隙間があった。 「乗ってもらおう」  ジョセフが私にささやき、私もうなずいた。 「お乗りになって!モートン伯爵邸に急いで行くところなのだけれど」
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