54 再会と喪失 ヴァイオレットSide

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「使います!」  サミュエルの馬車は馬も御者も含めて大きな丸い透明バリアが出現して包み込んだ。  そのまま馬車は動き出した。私達を狙った魔術師の攻撃が止まったことに、私はホッとする思いだった。バリアは効果的だったようだ。  周囲も一気に動きを開始した。 「お、お嬢様、私はなぜここに!?」  隣にいたジョセフが突然私に聞き始めた。彼はなぜこんなところで私と馬車に乗っているのか分からない様子だ。 「え?」  私はジョセフの顔を食い入るように見つめた。  ――純斗が中に入っているのではなかったの? 「モートン伯爵の領地でヒュー王子が落馬された。急ぎ来て欲しいと魔導師ジーニンから依頼があったから、今から行くところだ。君はぼーっとしているのか?」  突然、くしゃくしゃのブロンドの髪をした頭をあきれたように振りながら、レキュール辺境伯のエリオットがジョセフに話し始めた。明るい碧い瞳は笑っているようだ。 「あ……私、ちょっと混乱していたようです。ヴァイオレットお嬢様、大変申し訳ございません」
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