54 再会と喪失 ヴァイオレットSide

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「いや、見てはいけないものを見てしまったから殺されたんだ。君が亡くなった後、マルグリッドとルノーは逢瀬を重ねていたんだ。マルグリッドとヒュー王子は、君が亡くなった後には婚約していた。結局ルノーは君を欲しがっていたんだ。君を殺す必要はなかったんだとルノーはマルグリッドに激怒していた。君が亡くなった後、レキュール辺境伯の領地はマルグリッドの謀でルノーに取られた」  私の知らない話がたくさん出てくる。サミュエルの馬車は何事もなかったかのように進んでいた。私は圧倒されるような思いで、状況を飲み込もうと窓の外の並木道に目をやった。馬車道は、両橋に人が歩けるスペースが作られていて、ピンク色の花が咲いていた。  ――あの花は……。 「お……お嬢様、これは何でしょう?」  突然、ヘッドフォンで音楽を聴いていたはずの隣に座っているジョセフが叫んだ。ジョセフの手が赤く染まっていた。 「え?」  私はハッとして目の前の席に座っているエリオットに目を向けた。彼の胸に短剣が刺さっていた。 「エリオット!嘘でしょうっ!純斗!何か言ってよ」  私は叫んだ。でも、彼は絶命していた。
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