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ジョセフの顔の周りに薄青い靄のようなものが出現して、それを追って矢の影のようなものが馬車の外まで飛んで行った。犯人の追跡を開始したようだ。隣国のカール大帝の弟のルノー・ガクセン・ハンリヒに雇われた術師に辿り着くだろうと私は推測している。
――お願いだから、マルグリッドは無関係でいて。
私はそう思ったが、分からない。彼女につける薬などないのかもしれないから。
「そーんなに派手な演出しなくても……」
くしゃくしゃのブロンドの髪の毛をかきあげながら、頬に赤みが戻ったハンサムなレキュール辺境伯が私をイタズラっぽく見ながら微笑んだ。彼はもう平気そうだ。
「エリオット!純斗……そこにいる?」
私は泣きたくなるほど安堵して目の前の爽やかな男性に聞いた。
「両方いるよ。ヴァイオレット、ありがとう。命を助けてもらった」
私は唇を震わせて泣いた。ジョセフは私の隣で気を失ったようだ。
「良かった……良かった……また、失敗するかと思った」
私は泣きじゃくった。大粒の涙が溢れてきて、みっともないと分かっているのに泣くのをやめられない。嗚咽が漏れる。
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