56 ラスボスとは ヴァイオレットSide

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「そうだね。君のおかげで、この1年で我が国は海上交易でも首位に食い込むほど名を挙げて来ているようだ。執事のハリーが嬉しそうに今朝語っていた。バリドン公爵家は率先してボルディ商社を使って交易をしているようだね。ハリーに書類整理作業を手伝うようにお願いされたところで、モートン伯爵家から緊急呼び出しが来たんだよ」  私たちは素早く置かれた状況を把握しようとした。さっきの甘いキスは一旦心のどこかにしまおう。私はヒュー王子とまだ婚約しているのだから。 「ヒュー王子を狙ったのは、ビール法に反対する者か、ナツメグの島の覇権を狙う者か、銀山や錫が取れるコーン地方を狙う者ということかしら?」 「その全部かもしれないけどね」  胸に寂しい郷愁のような思いが沸いた。ヒューが王子として狙われたことは前もあったが、あの時は単なる落馬だったような気がする。やはり、モートン伯爵邸で落馬したのだが。  ――でも、魔導師ジーニンの治癒力が対抗できない事例はあったかしら? 「ところで、あなたを狙ったのは何者かしら?」 「君も思っているだろうが、隣国の政権争いだよ。俺はラントナス家の王位継承者になる可能性があるレキュール辺境伯だから。俺エリオット・アクレサンデル・レキュールは母方の血統により、ラントナス朝の最後の王位継承者になってしまうんだ」  エリオットのブロンドが太陽の光を受けて輝くように見える。 「隣国のカール・ハンリヒ大帝亡くなり、彼の弟のルノー・ガクセン・ハンリヒが亡くなった場合、俺はハープスブートの王になってしまうんだ。ハープスブートの未来の王に君が近づきすぎると周りはやきもきしていた。僕は誰が見ても君に恋をしているのが丸わかりだったのから。気づかなかった?ヴァイオレット?」  私はイタズラっぽく微笑む彼の眩しい笑顔を茫然と見つめた。 「ほら、カール大帝には世継ぎが生まれない。そして病に不治の病に侵されているという噂があるよね。次のハープスブートの王座に着くのは俺かルノーのどちらかになる」
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