13 絶対絶命

6/14

132人が本棚に入れています
本棚に追加
/415ページ
 ――これは設定に従ったセリフということよね?ヒューは私の元婚約者という設定だから、こういうことを言うのは当たり前なのかもしれない。でも、ドキドキした。 「今説明した人物のうちの誰かが君を裏切って、処刑させるように仕向けた。結果的に君は殺された」  ヒューは私の顔を見つめながら言った。さっきと打って変わって怖いセリフだ。私の心臓がちくっとした。本当のことではないのに、胸がザワザワする。この異世界転生バイトには、こういう妙な胸のざわめきが起こることがある。当たり前かもしれない。毎日毎日ヴァイオレット公爵令嬢として振る舞うことを求められて、ヒューと魔導師ジーニンと御者のサミュエルの言動に合わせていると、時々私の感情が不意に動く。 「私を殺した犯人はヒューも分からないということね?」 「そうだ。僕も分からない」  私は考え込んだ。 「待って。ヴァイオレット公爵令嬢の私は婚約破棄されたんでしょう?ヒューは私の元婚約者だったのでしょう?ならば、あなたがヴァイオレット公爵令嬢である私に婚約破棄を言い渡したということですよ」  しばし、不自然な沈黙があった。
/415ページ

最初のコメントを投稿しよう!

132人が本棚に入れています
本棚に追加