13 絶対絶命

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「そうだ。僕は騙された。誰かが振り撒いた嘘を見事に信じてしまった。そして君に冷たく婚約破棄を言い渡した。そのことをとても後悔しているんだ。君はそんな人じゃないのに、僕はひどい嘘の方を信じた。僕が君に婚約破棄を言い渡して、挙句のはてに君は処刑された。そんなことがあって言い訳がない。本当に後悔しているんだ。本当にすまない、ヴァイオレット。君のことを今でも愛している。愛していながらどうして君のことを信じてあげられなかったのか……」  ヒューは苦しそうな表情になり、胸を押さえて声を震わせた。彼の美しい横顔が苦痛に歪み、目から涙が溢れてきて、彼の喉の奥から嗚咽が漏れた。  ――なんて演技が上手いのかしら。彼は役者になった方がいいかもしれないわ。  私は思わずヒューの演技に引き込まれて、彼を抱きしめそうになり、運転席で前屈みになって泣く彼の背に手を回し、優しく撫でた。 「ヒュー、許すわ」  私は思わずささやいた。 「ヴァイオレット」
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