13 絶対絶命

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 ヒューがお会計をしている間、私はドアのすぐ側で待っていたが、酔ったのかふわふわした心地で今すぐに目を瞑ってしまいそうな気持ちだった。ヒューがお会計をする間、ヒューのiPadは私が預かり、私はそれをリュックに入れて胸に抱えていた。  ふっと腕を優しく掴まれて、思わず「ありがとう」と言った。ヒューだと思った。そのまま優しくエスコートされて車の助手席に乗り、私は助手席でちょっとだけ目を瞑った。  ――慣れないお酒で酔ったんだわ。ほんの少しだけ目を瞑っていたい。ごめんなさい、ヒュー。  ほんの少しだけ目を瞑ったはずなのに、次に目を開けたら、山道を走っていた。来た時は通らなかった道だ。私はハッとして運転席を見た。そこに乗っていたのはヒューではなく、知らない男性だった。 「だ……誰ですかっ?」  私は小さな悲鳴をあげた。男性はニヤッとして私を見て、そのまままっすぐに前を見た。 「隙があるねぇ」  低い声でぼそっと男性はささやき、私は薄気味悪さで鳥肌が立った。後ろを振り返る。真っ暗な山道で周りに誰もいないし、車一台すれ違わなかった。
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