13 絶対絶命

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 彼が後ろから追いかけてくるのが怖くて怖くてたまらなかった。獣が出てきたらどうしようと思ったが、走るのをやめられなかった。雨が降り出して道の途中で滑って転んだ。転ぶとどうしようもない恐怖のあまり、叫びたかったが、叫ぶとあの男に見つかりそうだ。  ――あいつがラスボスなら絶対許さない。道なりにくだって逃げよう。  私は自分に言い聞かせた。ヒューのiPadを持っていることを思い出して、電源を入れて、その灯りを頼りに歩いた。ヒューのiPadにはパスコードがかかっていなかった。そのまま設定からヒューのiPhoneを探して呼び出した。  ――お願い!ヒュー、気づいて!  私の携帯で警察に連絡をしようとしたら、バッテリー切れだった。  ――助けて!誰か助けて!   私は泣きながら泥だらけになりながら、道を下った。あの男が追いかけてくることを恐れた。恐怖に駆られて走った。異世界転生バイトなんかするんじゃなかったと後悔した。  処刑されたヴァイオレットも怖かっただろう。でもあれは作り話だ。私の身に起こっていることは真実で、私は今絶体絶命だった。
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