14 最悪の失態 ヒューSide

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「ジーニン、ヴァイオレットがいなくなった!ヴァイレオットの電話が繋がらない。電源が切れているようだ」  俺はパニックになって魔導師ジーニンに電話をしていた。胃の奥から真っ黒い恐怖の塊が込み上げてくる。不安だ。二度と彼女を失うわけにはいかない。  レキュール辺境伯領の草原で彼女を見失った事があった。その時以来だ。馬に乗って何時間も探し回ったのに見つからなかった。  あのラントナス家の最後の王位継承者になると噂される、くしゃくしゃのブロンドヘアの若い魅力的な辺境伯とヴァイオレットが二人で現れた時のことを思い出して、俺の胃はまたキリキリと痛んだ。彼は煌めく瞳でヴァイオレットを見つめていた。だから、俺は勘違いをした。それは彼が魅力的でとてつもない可能性を秘めている点を知っていたからであり、彼がヴァイオレットを好いていることにすぐに気づいたからだ。  隣国のカール大帝に代わって、大国ハープスブートの王となる可能性を秘めた男と、美しくスキルがあり、心優しいヴァイオレットが一緒に並び立つさまは、俺の中で底知れぬ不安と嫉妬の感情を呼び起こすものだった。  ボアルネハルトの王子の俺が嫉妬と無縁の人生を送っているかというと違う。ヴァイオレットに出会ってから、俺も普通の男だと思い知らされる日々だった。彼女に夢中だったから。  少なくとも、前回ヴァイオレットの姿が見えなくなった時は、レキュール辺境伯が助けてくれた。しかし、今日は違う。ここにはあの若く魅力的なレキュール辺境伯はいない。
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