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一瞬、華やかな舞踏会のシーンが頭をよぎったが、次の瞬間に、また私は自分の体がずるずると落ち始めたことに気づいた。
◆◆◆
相変わらず、私は周りに誰もいない山の中で殺されかけていた。一瞬死ぬ間際に見えたものが、それはまるで走馬灯のように見えたものだった。ただ、それがバイトでなりきっていただけの「ヴァイオレット公爵令嬢役」の幻想だったことに、私は心の底から愕然としていた。
――毎日毎日バイトをしすぎたおかげで、死ぬ直前までおかしな夢を見ているわ。しっかりしてよ富子!あなたはヴァイオレットじゃないでしょう?夢見ている場合じゃないんだから!今は死にかけているのよ!
私は自分を泣きながら叱咤した。ずるずると泥の中を落ちる。下は谷かもしれない。
「もうなんでこんなことになっちゃったの?ここで死んじゃうのかな」
私は泣きながら喚きながら落ちて行った。私の中で何かが弾けた。
――ラスボスに負けてたまるかっ!
「ステータスオープン!」
私は毎日毎日タスクとして言わされていた言葉を無我夢中で言っていた。
「Lvl512の擬力を使いますか?」
「つかいますぅぅぅぅ!」
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