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――夢でもいいからもう一度ヒューに会いたいの。
私はなぜかそう思った。私の中のヴァイオレットに感情移入した気持ちがそう思わせているのかもしれない。私は鳥のまま泣きながら急降下したのだ。
「ステータスオープン!」
私はもう一度叫んだ。鳥のままなので奇妙な囀りだったが。
「擬態を解除しますか?」
「します!」
私は叫び、ヒューの運転するポルシェの前に飛び降りた。ヒューは音を立てて急ブレーキをかけてポルシェを止めた。すぐさま運転席のドアを開けて転がるように山道を走ってきた。
私は振り向き様に、山の中腹にいるはずの犯人を指差した。
「Lvl1240の稲妻で攻撃しますか?」
「します!」
ピカっと電流が静かな山間に一瞬走った。山腹にいるはずのあの男を直撃したはずだ。男はしばらく起き上がれないだろうと私は思った。
「ヴァイオレット!」
走ってきたヒューが私を抱き寄せた。
――富子です……。こんな時もバイトの設定のままなんですね……。
私は意識が遠のく中で、ヒューにふわっと抱きしめられたのを感じた。
「スキルを発動したんですね、聖女様」
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