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「ヴァイオレットお嬢様、おはようございます」
運転手のサミュエルがアパートの目の前の駐車場に黄色いフェラーリを停めて待っていた。私はまたサミュエルに会えて心底嬉しかった。
「ガラスの馬車でなくて大変申し訳ございません、お嬢様」
恭しくサミュエルが私にささやいた。私は尊大にうなずいてみせた。バイトの設定は死守しよう。昨日のことは後でヒューに確認しよう。
私は生きて生還したようだ。ただ、あれは夢だと思う。
アパート前には、大家さんが育てているブルーリバーとピンクリバーのスーパートレニア カタリーナの涼やかで爽やかな花が咲いていて、朝露が光っていた。大輪の黄色いひまわりの花も咲いたようだ。
私は生還できた喜びで浮き立つ心を抑えきれず、スキップするようにフェラーリまで急いだ。
夢の中でラスボスに勝ったような気がしていた。
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