16 聖女の力

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「また派手な車だね」  アパートの右隣に住む一人暮らしのおばあちゃんが、サミュエルのフェラーリを見ている。フェラーリと私の顔を交互に見比べて驚いた表情をしている。 「富ちゃん、いつの間にこんな彼氏ができたの」  ビシッと紺色の制服を着たサミュエルは慌てて否定モードに入った。 「おばあさま、わたくしめはお嬢様のただの運転手でございます」 「それを彼氏と言ったりするんでないの?でも、あんたはどう見ても富ちゃんより2倍は年がいっているよね。いくらあんたがハンサムでシュッとしているからって、こんな若い子にそんな金持ち用の派手な車で近寄るなんて、ちょっと恥ずかしい話だよ。富ちゃんもやめた方がいいんじゃないかい?」  サミュエルは青ざめて「滅相もございませぬ」と手をふりふりして否定している。 「おばあちゃん、こちらはバイト先の方で親切に送ってくれるだけですよ。サミュエルさんです」 「サミュエル!?まあた、顔に似合わない名前だね」  おばあちゃんは紺色の制服を着て恐縮しているサミュエルの全身を無遠慮にジロジロ見つめた。 「おばあちゃん、大学に行ってきますね」 「はい、富ちゃん。気をつけてね」
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