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結菜が2階の手すりから下をのぞき込もうとして落ちかけていた。
いや、落ちた………ように思った。
私が猛然とダッシュして2階に上がる外階段を駆け上がる瞬間、結菜の体はまだ宙に留まっていた。滞空時間がやたらと長く感じたのは、危機に瀕した際、人間の脳の仕組みには太古の昔から備わっている能力で周りの動きをスローモーションに感じる力があるわけで…………ってそれにしても長いっ!
結菜は空中に浮いているように数秒の間は静止していた。
階段を駆け上がりながら、私は落ちてきた結菜を両手でキャッチした。
「でかした、富ちゃん!今、ものすごいスローモーションに見えたわぁ」
おばあちゃんが拍手して、結菜のお母さんが泣きながら階段を降りてきて、結菜を抱えた私ごと抱きしめた。
キャッ
その衝撃でぐらりと傾いた私の体を、お母さんはガシッと抱きしめて片手で階段の手すりを持ってしっかりと支えてくれた。
「ありがとう、富ちゃん!命の恩人よ」
結菜のお母さんは泣きながら私にお礼を言ってくれた。
「スローモーションで見えて、もうダメかと思った…………」
結菜のお母さんは泣いていた。
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