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――今の何?
――みんながやたらとスローモーションで見えたのなら、結菜が空中に浮いているように見えたのは、私だけじゃないということだ。
私は耳の奥でこっそり聞こえた声を幻聴だと思うことに決めた。
『Lvl349の時を停止するスキルを使いますか?』
心の中で私は「使います!」と叫びながら2階に向かう外階段に向かっていた。
――そんなバカな。バイトのし過ぎで本当に私は疲れているのかもしれない。異世界転生バイトは長時間だし、ファーストフード店のバイトて掛け持ちしているわけだし、いくら何でも疲れたのかもしれない。
「お嬢様、大学の一限目に間に合わなくなりますっ」
サミュエルがフェラーリの助手席のドアに手をかけながら、必死の形相で私に言っている声が聞こえた。
――あぁ、そうだった。急がなきゃ!
私は結菜をお母さんに引き渡すと、急いでフェラーリまで走った。
「富ちゃん、ありがとう!」
バイバイと手を振る結菜の姿に手を振り、駐車場に膝をついてかしこまって見送る魔導師ジーニンを『変な人』という目で見つめるおばあちゃんの姿を背にして、私はサミュエルの運転するフェラーリで大学に向かった。
「ヴァイオレットお嬢様、さすがでございます」
運転しながら、サミュエルは涙ぐんで私にそっとささやいた。
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