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「ヴァイオレットお嬢様。無事に着きました。どうやら間に合ったようでございます」
サミュエルは嬉しそうな声でそう言うと、サッとフェラーリから降りて私の助手席側に回ってドアを開けてくれた。ここはショッピングモールの駐車場だ。
私は反射的にフェラーリから降りて、大学の構内を目掛けて走り始めた。苦学生の私は、必修科目は一つも落とせない。留年などできない。
私は必死で走って一限目のゼミの教授の顔を思い浮かべた。大塚先生は遅刻する学生がお嫌いだ。
大学の校内では蝉が鳴いていた。爽やかな青色が特徴のブルーサルビアがあちこちに咲いていた。ちりめん状のピンクや白のサルスベリの花が鮮やかに咲く木陰を私は一気に走り抜けた。
今日も暑い日になりそうだ。スキルのことは頭からすっかり抜け落ちていた。
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