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「ルネ伯爵家のマルグリット嬢が、ヒュー王子を好きでたまらず、うちのヴァイオレットお嬢様に嫉妬しているという噂がありますね」
「あら、誰がどう見ても、ヒュー王子はヴァイオレットお嬢様を愛してらっしゃいますわ」
パンティエーヴルさんとアデラはバラを器用に摘みながら会話している。
――マルグリットがヒューのことを好き?ならば、ルネ伯爵令嬢のマルグリットには、私を排除する理由があるわ。
私の心臓はコトンと音を立てるように跳ねた。そんな話は今まで聞いたこともなかった。
「ヴァイオレットお嬢様は人の悪意に気づきません。聖女は人の清らかな面しか気づかないのですよね」
アデラがため息をつきながらそういうのを私はぼんやり聞いていた。
◆◆◆
目を開けると、私はフランス語で大塚教授にそう答えていた。
「マルグリットがヒューのことを好きだなんて知らなかった」
大塚教授は「三者間の恋愛感情のもつれ?」と呟き、「それにしても今日のあなたはネイティブ並よ」と言った。
寝ぼけて反応した私にクラス中にクスクス笑いが起きた。
ここで、緊急速報のアラートが出たというスマホから一斉に鳴り響き、私の充電が切れた古いスマホ以外のスマホが警戒音を示し続けた。
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