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魔導師ジーニンに促されて、私はいつもの言葉を唱えた。
「ステータスオープン」
ジーニンとヒューは険しい表情で私の頭上を見つめていた。私はため息をついて、トンカツ定食を食べ始めた。ヒューがご馳走してくれたのだ。
私の地球の最後に食べる食事は――最後から二番目に食べる食事かもしれないものは――トンカツだ。亡くなった父が私の高校入学式の後に連れて行ってくれたのもトンカツだった。その日の事を思い出して、私の目に涙が浮かんだ。
三笠富子である私が15歳の春に高校に入学した時、実の父はそばにいてくれた。大きくて美味しいとんかつを二人でお祝いに食べに行った。
言葉少なにトンカツ屋に行くと行って連れて行ってくれた父のことを思い出して、私はポロポロ涙をこぼしながら食べた。明日で地球は終わるという。今、私の前には父の姿はなく、ボロボロのシャツとジーンズを着た魔導師ジーニンと白シャツを爽やかに着こなした元婚約者ヒューがいた。
魔導師ジーニンが私にささやいた。
「今年の収穫は去年を超えそうでございます」
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