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「分かったあぁっあんっあんぁん!」
男の額に汗が滲み、唇が一時の喜びに口角が上がる。
俺は状況を瞬時に把握した。霧の中でレキュール辺境伯領に迷い込んだ聖女を保護したのを思い出した。彼女は美し瞳を持ち、まっすぐな影のない、曇りのない瞳で俺を見て感謝してくれた。
まもなく、この辺境伯領は聖女のものになるはずだ。俺は聖女の彼女が見通したこの地の民を豊かにする計画に賛同して、この地に引き続き残り、彼女と一緒に再建することに賛同した。
――ただ?
――聖女がボアルネハルトのヒュー王子の婚約者になったと発表されたばかりでなかったか。
――それなのに、今俺が目にしている光景はなんだろう?未来の王妃は聖女で決まりだ。
――マルグリッドが王妃になったら?
――どういうことだ?
男は、ボアルネハルトの隣国であるハープスブートのカール大帝の弟だ。女癖がすこぶる悪いと評判のやつで、ずる賢い男だ。
俺はそのままそっとその場を離れた。考えながら歩く。陰謀だ。これは、ボアルネハルトの資本と資源を狙った陰謀だ。マルグリッドという名前はどこかで聞いた。俺は考え込んだ。
――あ!
――ルネ伯爵令嬢マルグリッド!?
ボアルネハルト社交界で愛らしい令嬢として評判の令嬢が確かそんな名前だった。
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