134人が本棚に入れています
本棚に追加
/415ページ
俺は駆け出していた。聖女ヴァイオレットの身に何かが起きる可能性がある。
だが、俺は一足遅かったようだ。
ボアルネハルトのヒュー王子が婚約者である聖女ヴァイオレットを激しくなじる場面に遭遇したからだ。ヒュー王子に謁見を求めて宮殿に駆けつけた時には、時既に遅しだった。ボアルネハルトの辺境の地にあるレキュール伯爵領からは、都までは馬車と馬で駆けて7日かかったからだ。
宮殿に行くと、偶然、中庭でヒュー王子が聖女を叱責して婚約破棄を言い渡した瞬間に遭遇した。ヒュー王子はよほど許せなかったのか、彼女に破り捨てた婚約書を投げ捨てた。
俺は思わず2人の間に割って入った。陰謀だと伝えようとしたのだ。
しかし、ヒュー王子は俺を見るとますます怒りに顔を真っ赤にした。
「レキュール伯爵がなぜこの場に?辺境伯爵が、わざわざ都までご苦労なことです。貴方が奪った私の婚約者をお返ししますよ」
俺は意味が分からず言葉に詰まった。聖女は顔色が真っ青だった。
その後、衛兵たちが中庭に押し寄せてきて、聖女ヴァイオレットを拘束した。謀反の罪で。
ヒュー王子はそれには驚いて皆を止めようとしたが、後の祭りだった。
俺は懸命に陰謀だと訴えようとしたが、聖女ヴァイオレットの浮気相手として拘束された。
最初のコメントを投稿しよう!