20 祝杯と過去の世界に

7/8
前へ
/415ページ
次へ
「この中に犯人がいるから、特定して犯人の動きを封じ込められれば、ヴァイオレットは死なないですむということになるのか。賞金は何にする?」  メガネをかけて知的な雰囲気の大学生純斗は気軽に私に話しかけてきた。部屋の隅から悠斗が興味を持ったように私たちの方を見ている。 「考察会を開こうよ。だってヴァイオレットも君たちも、まだ手がかりを集められていないんだよね?」  彼は謎解きに前向きだった。魔導師ジーニンは大学生の彼をじっと観察していた。私の元婚約者のヒューは藁にでもすがりたいのか、iPadで登場人物のモートン伯爵の画像を開こうとしていた。 「みんなでヴァイオレットが死ぬ運命を回避しよう。犯人を突き止めて、犯人と真剣勝負しよう」  私は呆然としていた。ついさっき自分が公爵令嬢だったと知ったばかりだ。頭が追いつかない。  アパートのベランダには、朝顔があった。悠斗が学校から持って帰ってきておばあちゃんにあげたものだ。青い朝顔の花の隣に白とピンクのペンタスの花が咲いていた。  ペンタスの花言葉は「希望がかなう」だ。    
/415ページ

最初のコメントを投稿しよう!

129人が本棚に入れています
本棚に追加