21 聖女降臨 完全覚醒 ヴィオレットSide

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 ある日、アルフレッドが私に紹介したのが隣国の大臣だということに気づかなかった。  聖女は人を疑わない。聖女は人を陥れない。  私は聖女だったから、アルフレッドを信じていた。ヒューも信じていた。人の心は聖女であった私には難しすぎた。最愛の人が心変わりをするということを知らなかった。私の継母はずっと私のことを嫌っていたし、私の親友のマルグリッドは私にずっと親切だった。人は変わらないと思っていた。  でも、本当は心変わりする人間自身を理解できなければ、誰のことも救えないのかもしれない。  私は聖女として失格だ。自分が振られたぐらいで力を失った聖女なんて、偽物だ。  私は牢獄でそう思った。  婚約破棄をヒューに言い渡されたのは、牢獄に入る直前だ。ヒューは私に猛烈に怒っていた。私の弁解に聞く耳を持たなかった。誰がヒューにそんな嘘を信じ込ませたのだろう?私はヒュー以外の誰とも愛を誓ってなどいない。誰とも一夜を共にしていない。私は潔白だ。それなのに、彼は証拠を見せられたと言って聞いてくれなかった。誰に見せられた証拠なのだろう?
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