21 聖女降臨 完全覚醒 ヴィオレットSide

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 バリドン公爵である父、執事のハリーが私に会いにきた。私の家庭教師だったパンティエーヴルさんと侍女のアデルが私の見舞いに来た。でも、私は力無くうなだれるだけで何も反応できなかった。バリドン公爵家の料理人のベスが腕によりをかけて一生懸命作ってくれたという、私の大好物の非常に高価な砂糖をふんだんに使ったお菓子も差し入れてもらったが、私は手をつけることができなかった。  私は完全に無気力状態に陥っていた。 「さあ、立ちなさい!」    ほとんど飲まず食わずで数日過ごした後、フラフラの私は引っ立てられるように皆の前に引きずり出された。  連れて行かれた広間には国王がいた。ヒューの父だ。私が目を動かすと、ヒューと目があった。彼の目は冷たく、私を見返した。  それだけで私の心は凍りついた。 「ヴァイオレット・ジョージアナ・エリザベス・バリドン。そなたは我が国の土地を隣国に売り渡すことに加担したな」 「いえ、そのようなこと…………」  私の消え入るような声での弁解はかき消された。 「この聖女は嘘をついています!」  誰か知らない人が大声ではっきりと私を非難した。
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