君が消えていく

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君が消えていく

ある日、君がいなくなった。 昨日まで隣でスヤスヤ寝ていた彼女が、朝、目が覚めるとまるで今までの日々が幻想だったかのように消えていた。 理解が追いつかない。 家の中を見渡しても彼女はどこにもいなかった。 嫌な予感がする。 起きてからずっと、いつもと違う何かが。 まるで、彼女がもうこの世界からいなくなってしまったかのように思える。違和感。 朝からずっと続く違和感。 何もかもおかしい。 彼女がいた痕跡がだんだんと薄れてくる。 僕はもう、彼女の名前すらも思い出せない。 僕の記憶の中の彼女にだんだんモヤがかかっていく。 ひとまず彼女に電話をしようと心得たが、僕は彼女の電話番号を思い出せなかった。 なぜ思い出せない?履歴をだどっても彼女の電話履歴はどこにもない。 まだ微かに残っている彼女との電話の記憶。 その記憶をたどっても、彼女と電話したという記憶しかなく、彼女の声、会話の内容、僕と彼女の関係、何もかも思い出せない。 さっきまで、隣に必ず誰かいたはずだ。 しかし全くそれが誰だかは思い出せない。 全て僕の妄想だったのだろうかと想えるほどに、記憶から彼女は消え去っていく。 夢だったのか。 家の中、スマホの履歴、どこにも彼女が生きて痕跡がない。 今現在、僕は彼女のことを9割型思い出せなくなってきている。 本当に彼女という存在は生きていたのか。 やっぱり夢だったのでは無いのだろうか。 僕は、長い夢を見ていたのか。
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