君が風化する

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君が風化する

今日も生きるために金を稼がなければならない。 仕事へ向かうために朝6時、支度を始める。 アイロンなんてかけたこと無いはずなのに、何故か仕事着に(しわ)はひとつもなかった。 やはり朝から違和感を感じる。 タンスには見たことの無い女性用ワンピースがハンガーにかけられてあったが、何故か不思議に感じなかった。 まるで当たり前に存在したかのよう。 着替え、歯磨きを済ませ、「いってきます」と誰もいないはずの家に向けて(はな)つ なにか大事なことを忘れているような気がする。 僕は、家の鍵を閉め忘れたかのような感覚に(おち)る。 この感覚は一体なんだったのだろう。 数年経った現在でも理解することが出来ない。 あの出来事以来、日が経つことにあの違和感が風化していった。 あの感覚も、妄想、もしくわ夢だったのかもしれない。 あの感覚は、どうやっても取り戻すことは出来なかった。
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