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断っておく。
僕は春が好きだった。
かわいかった。
傷つけたくなかった。
そして、間違えた。
と、墓場まで持っていく。
春はその日、僕の職場に迎えに来た。
「オサムくん、おめでとう!」
ケーキを選ぼう、と。
僕の27回目の誕生日だった。
そのころすっかり意気消沈し、自暴自棄になっていた僕は、春の部屋の近くの居酒屋で、酔ってしまった。
春の部屋は、いつもの様にキャンドルで飾られた。
酔った勢いだった。
「春、君には欲情出来ない」
全裸の春は、目に涙を溢れさせ、
「気付いてたよ。音楽?何それ。わたしはオサムくん初めて見た時、この人しか居ないと思ったんだよ。だから、ギターとうたを練習して、曲作った。
あの、F.A.Dでのライブ、覚えてる?いつも文香ちゃんベタベタしてて、羨ましかった。わたしの運命の人なのに。アイラブユーオサムくん。だから、オサムくんに好かれたくて、文香ちゃんみたいになったんだよ。オサムくんだけなんだよ?わたしの生活は。どおして、文香ちゃんは良くて、わたしはダメなの?文香ちゃん、優しいオサムくんをキープして楽しんでるだけだよ、オサムくん、可哀想だよ」
正鵠を射る程に認められなかった。
「文香だって、良いやつなんだ。これ以上、悪く言うな」
語気を荒めたかもしれない。
「オサムくん、わたしたちの子どもがおなかにいるの。」
「もう、何が嘘か本当かわからないよ。
本当だとしたら、墮ろしてくれ。」
この一言に、ふたりは我に返った。
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