0人が本棚に入れています
本棚に追加
京と別れ車に乗り込むと、また心細くなった。
いいヤツだった。
もう会う事は無いだろう。
トリマーになれると良いな。
忘れたくて、京の事ばかり考えた。
別の漢字ひと文字を、必死に忘れようと。
僕にとっていいヤツとは、僕を好きかどうかだった。
ならば…、いやいや
そんな風に考えてしまうのは、いよいよ脱都会の一本道となる国道1号線・15号線の重複区間、東神奈川、春の部屋。
気づいたら、いつも車を停めてた場所から見上げていた。
まだ住んでるらしい事は、カーテンで察せられた。
謝らなきゃ、強い想いが溢れ、電話した。
彼女はすぐに出た。
「あ、僕だけど、あの、」
「もう、話す理由がありません」
ものの数秒。
なんで電話したんだ?何かを期待したのか?
ベストな答えだった。
これで、ひとり。
さあ、逃げ帰ろう、あのクソ田舎へ。
勢い良く、車を走らせた。
そのまま、文香の住む大森海岸も通り過ぎ、孤独な自由に向かって、北へ、北へ。
最初のコメントを投稿しよう!