手記

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 京と別れ車に乗り込むと、また心細くなった。  いいヤツだった。  もう会う事は無いだろう。  トリマーになれると良いな。  忘れたくて、京の事ばかり考えた。  別の漢字ひと文字を、必死に忘れようと。  僕にとっていいヤツとは、僕を好きかどうかだった。  ならば…、いやいや  そんな風に考えてしまうのは、いよいよ脱都会の一本道となる国道1号線・15号線の重複区間、東神奈川、春の部屋。   気づいたら、いつも車を停めてた場所から見上げていた。  まだ住んでるらしい事は、カーテンで察せられた。  謝らなきゃ、強い想いが溢れ、電話した。  彼女はすぐに出た。 「あ、僕だけど、あの、」 「もう、話す理由がありません」  ものの数秒。  なんで電話したんだ?何かを期待したのか?  ベストな答えだった。  これで、ひとり。  さあ、逃げ帰ろう、あのクソ田舎へ。  勢い良く、車を走らせた。  そのまま、文香の住む大森海岸も通り過ぎ、孤独な自由に向かって、北へ、北へ。
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