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轟音の中にいた。
ただ、立っていた。
マイクに背を向け、ギターからも手を離し、アンプに向かい、ただフィードバックノイズを垂れ流す。
何も出来ず、突っ立っていた。
このところ、ずっとこうだ。
まわりに付いていけない、と感じると、すべてを放棄してしまう。
いや、ただフィードバックさせてた方がマシなんじゃないか?
あの悪夢の1日は、簡単には消えなかった。
僕を拾ってくれたのは、別の国立大学のバンドだった。
スタジオの壁にはthee michelle gun elephantという無名バンドのライブ告知がいつも貼ってあった。
どうやらバンドメンバーたちのサークルの先輩らしかった。
そのバンドでは、僕はボーカルギターを任された。
だが、すぐに技術の差に苦しんだ。
バンド名も僕の思い付きが採用され、ライブでは真ん中に立ち、アイコン的な居場所を許された。
しかし、彼女と一度目の別れをした時、出ていく彼女に有り金全部渡して金に困り、スタジオ代を他のメンバーたちに立て替えてもらう様になった事を契機に、僕は姿をくらました。
心配して訪ねて来るメンバーに、居留守を使った。
自分のバンドを組まなきゃダメだ、と、僕はメンバー募集を出し、何度もオーディションを繰り返した。
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