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「ちげぇねえ。すさんだ心が、最後の最後で明るくなったもんな」 「みんな感謝してるんだぜ、あんたのことをよ」 「ほら、俺たちのために笑顔をみせてよ」  思いも掛けずマヒワに会えて、みんな元気になったようだ。  逆に、落ち込んだマヒワのことを心配しだす始末。 「なんで、なんで、あたしのほうが慰められるのよ。みんな、バカじゃないの!」 「それ、それ、あんたのそれがいいんだよぉー」 「うるさい! 変態!」  マヒワは目をあかく腫らしながらも必死で笑顔をつくって言い返す。  囚人の人数が多いので、全員が同じ日に処刑されるのではないらしい。  マヒワは、いちばん早く死刑が執行される連中の入れられた檻に近づいて、違和感を持った。  この檻の連中は、傷がもとで死にかけている者のほか、あのときの闘いで関節が潰れるなどして、怪我の恢復が見込めない者で占められていた。  ――傷が深いからという理由だけで、先に死刑場に送るのかしら……?  ――傷が深くて身動きが不自由であれば脱獄する可能性も低い。ならば、元気な者から先に死刑にするほうが、脱獄される危険性も低くなるのに……。  マヒワは、ほかの檻にも目を向けた。  ――やっぱり、ほかの檻の連中は、完全とは言えないまでも、からだを動かせるようね。 「ねぇ、だれか、刑の執行について何か聞いてない? 何でもいいから」  マヒワは全員に尋ねた。 「そういやぁ、俺たちの刑の執行は、ここじゃなくて、どこかに連れて行かれるって聞いたな……」  とひとりがつぶやいた。 「うん、聞いた」 「おれも」  数は少ないが、ほかにも聞いた者がいるようだ。
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