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「おい! 何を話している!」  さすがに立ち会いの衛士が咎めた。  ――うえーぃ! これか! 「はい、はい、もう帰ります。どうもすみませんでした」  みんな元気でね――、と死刑の決まった連中にとっては、慰めにもならない別れの挨拶をして、マヒワは衛士に引っ立てられるように獄舎を出た。  ――いったい、からだの動かせる連中をどこへ連れて行く気なんだろう?  ――からだの動かせる連中を別の檻に分けているとしたら、何をさせるつもり?  衛士の反応を見る限り、マヒワは流れ者たちとのやりとりのなかで、触れてはいけないところへ確実に触れたようだ。  マヒワの疑念は募るばかり。  ――そういえば、レイとかいう衛士隊長さん、今日は見なかったな……。  ――彼は反アドウル派ではないような気がする。  ――どちらかといえば、アドウル候に忠誠を誓っているように思えたし。  ――まぁ、それが家臣として本来あるべき姿なのに、すごく貴重な存在と思えるのは、かなり重症ね、この領地は……。  城門を出たマヒワは、城下の街を見て歩くことにした。  領内の村は自警団に治安を任せているが、主要な街は衛士隊が治安部隊を兼ねていた。  教官や兵舎にいた衛士連中を見る限り、兵としての質はあまりよろしくない。街の治安の程度も、推して知るべしだろう。  マヒワはそれを確かめたかったのだ。  城下の街を歩き始めると、すぐに腰に剣を差した者たちが多いのに気づいた。  マヒワも同じ格好だが、清潔感がなく、生活に疲れたような目をしている。  城門から続く目抜き通りを外れて、市場の設けられた区画に入った。
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