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 そしてコルがそのまま手を捻るとそれに合わせ開錠の音が気持ちよく鳴り響き、何もなかったはずの壁の一部が(刺さった鍵をドアノブ代わりに)ドア状に開いた。その向こうは最初の円形同様に煌々としておりどこに繋がっているかは不明。だがユーシスは一切疑う事無くその光へと足を進めた。  一瞬の光に包み込まれ先へと出たユーシスの眼前に広がったのは、雑貨屋のような一室。少し明りは弱く本や小物で溢れ返っているが汚いとはまた違う。  そんな部屋でテーブルの傍にある椅子へ腰を下ろしていた初老の女性は冷静沈着とした様子でティーカップを口へと運んでいた。ユーシスはその女性を他所にそのままテーブルとは少し離れたソファへと向かい、彼に続いてコルが部屋へ入って来るとドア代わりの光は静かに消えていった。 「無事だったみたいね。しかも無傷だなんて」  テラを抱えたままソファに座ったユーシスは膝上に乗ったままの彼女の背中に手を添え、テラはユーシスの首へ手を回した。  そしてそんなユーシスへ女性は落ち着き払った声でそう言葉を口にした。 「アイツらは何もしてこなかった」 「それはきっといつでも取り返せるって意味じゃないかしら?」 「そうかもな」 「ありがとう。ユーシス」  するとテラは安堵と感謝の籠った声でお礼を言うと寄り掛かるように抱き締めた。少しの間だけ頭をユーシスの胸に預けたテラは顔を離すと視線を彼の目元へ。
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