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第一章:凍った雪の国
新品同様の白いテーブルクロスが皺ひとつなく敷かれた縦長テーブル。外観を見ずとも建物の規模をある程度予想出来るような上品だが豪華なダイニング。
そこでは仮面をしたメイドに囲まれながら三つの人影が各々の食事をしていた。二人に挟まれるように座り、フォークとナイフを使って丁寧に魚料理を口へ運ぶ男性。それはあの舞踏会にいた紺青髪の男。
「おいオリギゥム。ホントにアイツ逃がして良かったのか?」
そんな男性へ荒い口調を投げ付けたのは彼の左手に座る女性だった。椅子を傾かせながらテーブルに両足を乗せ、片手で骨付き肉を貪っている。だがあの時と服装は違いその口調に合ったものへと変わっていた。
「大した問題ではないでしょう。当分はちょっかいを駆ける程度で十分です」
静かに返事をしフォークを口へ運ぶオリギゥム。その動きは洗練され、まるで教本のようだった。
「だったら最初っから捕まえねーで良かっただろ」
一方、愚痴るように呟くと女性は目の前にある肉の山から一つを乱暴に掴み口へ。
「別にいーじゃん。それにアンフィスが捕らえた訳でもないんだしさ」
女性の向かいから聞こえてきたその幼いさ残る声はあのサスペンダーの少年。今は仮面をしておらず、その夏の蒼穹の様に澄んだ顔が露わになっている。そんな彼の前に並んでいたのは種類の違うパフェ。
「文句言い過ぎ~」
そう言うと少年は挑発するような表情を浮かべた。
「うっせー! ガキはすっこんでろ」
言葉と共に半端に肉の残った骨が回転しながら宙を駆け抜ける。
だが少年は顔を傾けひょいっと躱し、骨は後方の壁へ。
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