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 頭上で寸分の狂い無く整列し夜の闇を拒むように辺りを照らすシャンデリアと優雅に流れる音楽。煌びやかなその空間に負けず劣らずなドレスを身に纏う女性、それを立てるような落ち着いた黒スーツの男性。そこでは様々な衣装や体格の者達が各々行動をし、この空間を彩っていた。  ――舞踏会。その豪華絢爛な光景を目にし状況を一言で説明するならそれ以外の言葉は見つからないだろう。  だがしかし、全てに問わず全員が着けていたベネチアンマスクがその光景へより濃く不気味さを塗り付けていた。  そんな中、姿を闇に潜ませた人々を掻き分け進む人影が一つ。身に纏った婉麗なドレスとは裏腹に乱雑に息を切らしながら駆けるその人影は、テラスを挟むように湾曲した二つの階段の前で足を止めた。立ち止まると同時にこの場では異質な存在であるかのように仮面を付けていない――奇麗なドレスを単なる際立て役へとしてしまう顔がテラスを見上げる。  その視線先にいたのは、一人の男性と一人の少年そして一人の女性。片方が微かに目を隠した紺青色の七三髪に柔和な顔とスリーピーススーツの青年は中央で欄干に両手を着け、短パンにサスペンダーを着けた不敵な笑みの少年は左側で欄干に片足を上げ座り、攻撃的な双眸と撫子色ボブパーマそれに合わせたドレスの女性は右側で欄干に座るように凭れかかっていた。  他同様に三人の目元を覆ったマスクの隙間から女性を見下ろす双眸はどれも宝石のように赤く、そんな美しくも不気味な目を彼女もまた見上げていた。
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