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 すると、そんな二人へ贈られた祝福にしては嫌味にゆっくりとした拍手。ユーシスはテラに寄り添われながらその拍手を送っている男性へと視線を戻した。  二人の視線を受けながら徐々に鳴り止んでいく拍手。 「ではそろそろ――」  男性は顔を俯かせながらマスクへと手を伸ばした。そして言葉に合わせるようにマスクを外した顔を上げていくが双眸へは蓋をしたまま。 「一曲。いかがですか?」  言葉の後ゆっくりと瞼は上がり、やはり美しくも不気味な――蛇のような双眸が二人を絞めるように見た。  そして獲物へ近づく蛇のように最初は静かに流れ始めたオーケストラの演奏。段々とその存在感を顕著にしていく演奏に伴い、二人の周りでは男女のペアが互いの体に手を回し踊り始める。いつの間にかベネチアンマスクの女性を相手に男性も他同様にステップを踏み踊り出すが、テラとユーシスだけは依然と警戒の眼差しを辺りへと向け続けていた。  だが二人の警戒とは裏腹に周りはただ踊っているだけ。ではあったが、その警戒を形にするように辺りは一変した。
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