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 しかし、真正面からしかもたった一匹のデュプォス。それは大した脅威ではなくユーシスはタイミングを見計らい頭を鷲掴みにするとそのまま割る勢いで床へと叩きつけた。  だがそれはほんの先陣。ユーシスが鮮血の飛び散る頭から手を離す頃には、既に周りで睨みを利かせていたデュプォスは次から次へと動き出しあっという間に彼を囲うように襲い掛かって来ていた。その数の差と包囲された状況を考えれば戦況はユーシスにとって圧倒的不利だろうが、デュプォスはその圧倒的な数こそ最大の武器。一体一体の戦闘力は微々たるもので、彼にとって現状は大して苦戦を要する状況ではなかった。故にテラを守りながら一体また一体とデュプォスを沈めていく。一体に対しての戦闘自体はほんの数秒で終わるようなものだったが、絶えず襲い掛かるデュプォスに対しユーシスはズレもミスも許されぬ確実性を求められていた。  依然と流れ続けるオーケストラの演奏の中、絶え間なくデュプォスを倒していくユーシス。それはまるでこの宴を盛り上げるショーの一種のようだった。  だがそれをいつまでも続ける訳にはいかない。ユーシスはタイミングを見計らいテラを抱き上げるとその場を離れ飛び込んできた窓へと走り出した。それは期せずしてオーケストラに合わせるようになり、テラを抱えたユーシスは演奏の終わりと共に窓から飛び出した。
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