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9
既に割れた窓を通り外へと飛び出したユーシスだったが、彼を取り囲んでいた景色は内とは全く異なるものだった。豪華な城内だったはずの場所から飛び出した先に広がっていたのは、仄暗い路地裏。
ビルとビルに挟まれた狭く薄汚いその裏路地へユーシスが飛び出すと、後方では壁に開いていた円形の煌々とした光が一拍の間を置いてから縮小し消えていった。
だがその刹那の隙間を抜けたデュプォスが一匹。勢いそのままユーシスへと襲い掛かった。
しかしその殺気を感じ取ったユーシスは振り向きざまに上げた片足でそのデュプォスを壁へと蹴り飛ばす。一瞬にして激突し衝突と同時に血をまき散らすデュプォス。その後、垂れてゆく血液の後を追うように体はずり落ちて行ったが、地面に倒れるより前にその体と血は影となって消え去った。まるで最初から何も無かったかのように跡形もなく。
「あはっ! 無事だったんだねー。良かった良かった!」
デュプォスが消えて無くなった後、溌剌とした可愛らしい声がユーシスへそう声を掛けてきた。その声にユーシスが視線を向けるとそこには、ぱっちりとした目と爽快感のあるショートヘアが特徴的な女性が立っており、屈託のない笑みを浮かべていた。
「コル。それより開いてくれるか?」
「はーい。任せてー」
陽気な声でそう答えるとコルは壁の方を向きポケットからレバータンブラー錠を取り出した。そしてそれを当たり前のように何もない壁へと伸ばし始める。ゆっくりと伸びていき入り込む隙間の無い壁へと触れるが、鍵はそれを無視し中へとするり入り込んでいった。
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