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宝
二人がスネーク軍の元に向かうと、ケログ軍と——今まさに、ぶつかり合おうとする真っ最中であった。
「なんだかんだで、ここまで来ていたんだな。スネーク軍は……」
「魔王軍が撤退した情報は、まだ入っていないのかしら?」
「そうかも知れないな……分かっていれば撤退するだろうし。
あっ! 良い事を思いついた」
「なになに、教えて!?」
「それはな……」
フロックは、エリアルに耳打ちで作戦を伝えると……
「私が薬を飲むのは、あれとしても……作戦は悪くないわね」
「なら、この作戦で行くぞーー! おおー!」
あまり乗り気では無いエリアルをよそにフロックの作戦が始まった。
まず初めにエリアルが薬を飲んでカエル化すると、二人は魔力を溜めて——巨大な津波を作り出すとスネーク軍のサイドから、その攻撃をぶつけた。
まだ戦が開始ていなく、いきなりの横からの攻撃にスネーク軍は慌てふためいた。
「魔法部隊か!!! 何処から撃ってきた!」
そして、カエルの姿の二人が姿を現すと
「……魔物!? コルバチョフ軍が裏切ったのか?」
その間、ケロッグ軍は置いてきぼりをくっていた。
「スネーク軍——まんまと騙されたな!!!
お前達は、私達——魔物軍が本気で人間の味方になると思っていたのか! この愚か者どもが……」
「そんな……本当に裏切ったのか?」
「いえ、将軍……相手国のギルドには、カエルの魔物が所属していると言う噂を聞いた事があります。
多分ですが……その者、策略かと思われます」
「そうか……そう言う事か……まんまと騙されるところであった」
「どうした!? スネーク軍、我々魔物は! お前達人間の事など、どうとも思っておらんわ!!!」
「そんな嘘に、我々が騙させるとでも思っているのか!? 馬鹿者が!!!」
「あんな事を言っておりますけど、どうしますか!? コルバチョフさん……」
「様な……」
すると、岩陰からフロックが顔だけを馬に変えてスネーク軍の前にヒョッコリと現れる。
「バカなスネーク軍よ! これでもくらえー……ディープインパクト!!!」
ディープインパクトの爆撃に巻き込まれたスネーク軍は……
「間違いない! あの技は、オルフェーヴルだ……コルバチョフの奴が裏切りやがった!」
「どうしましょう……」
「どうもこうもない! 撤退だ!!!」
そして、スネーク軍はケロッグ軍とぶつかる事なく自らの国へと帰って行った。
すると、ケロッグ軍は……
「…………なんか知らんが、あのカエル達のお陰で——勝ったどぉーーー!!!」
それから、全軍が帰還すると……フロックとエリアルは、リサからギルドに呼び出しを受けた。
そして、二人がリサの元に出向くと
「お前達……また、城から要請が来ているぞ!
まぁ、今回は——戦での功績を讃えての呼び出しだと思うから心配しないで行ってくるといい……」
二人は顔を見合わせて……
「今回はね〜……大丈夫よね?」
「そうだな。大丈夫だとは思うが、一応! 保険はかけておくか……」
*
そうして、二人はお城へと向かった。
*
お城の門番は、二人の容姿を見ると……報告通りだったので、すぐに通してくれた。
そして、二人は国王の待つ大広間へと通された。
大きな扉を開くと、真っ赤なレッドカーペットに両サイドには貴族達が勢揃い。
そして、中央の煌びやかな椅子に座るのがこの国の王様! これが正しく王の風格と思わせるオーラを漂わせていた。
二人は、そんな雰囲気にも飲まれることなく……レッドカーペットを堂々と歩くと、王様の前にひざまずき——。
「こちらをお納めください。国王陛下……」
それは、体を紐でグルグル巻きに縛り上げられたキバであった。
「どうぞ……この者一人の首で、あの件は水に流して下さい!」
「…………そうか、では……」
すると、縛り上げいたキバが暴れて口の紐が解けると!
「酷いすッよ!!! 先輩、姉さん!!!
助けて下さい。許して下さい!!!」
「うるさい! 黙れ! 無礼者!!!」
「先輩だって、同罪すッよ! あの時、先輩だって王女様の事、オークって言ったじゃないですか!!!」
「黙れ! 馬鹿者!!!」
そして、キバは——また縛り上げられた。
すると!
「大丈夫ですよ。フロック様、エリアル様、キバ様……あの時の事は、咎めだりしませんから」
そう王女であるジュリエットが話すと……
「そうだな……一回目の要請は、打首にでもしてやろうと思っていたが……
今回は、違う要件だ! 戦争を終結させた功労者を咎めだりは……しない」
「一瞬、間がありましたけど……気のせいですよね?」
「……てか、あの王様の隣の女は誰だ!?」
「だれって……王女のジュリエット様よ!
見たら分かるでしょ。髪の色とか同じだし」
「いや、分かんねーよ! どれだけ痩せたんだよ……」
「あれ! あの時のオーク女なんすッか!?
全然、分かんなかったすッ……普通に王女様じゃないすッか!」
「もともと、普通に王女様よ!」
すると、国王が話し出した……
「ジュリエットは……ジュリエットは……お前達に屈辱を受けた後に、わしが心配をするのもよそに……食事制限と走り込みで、みるみる痩せて行った。
それはもう、見てるこっちからすると心配で……心配で仕方がなかったほどだ!!!
お前達に、分かるか——わしのこの苦しみが……」
「御父様その事は、もう良いのです。
そのお陰で、私にはダイエットの神様が降臨して——こんなにも綺麗になることが出来ました。
今は、この方々に感謝しかありません」
「……お前がそう言うなら。
確かに、痩せてからのジュリエットへの婚約の申し出が後をたたないのも、また事実だからのぉ……それは、嬉しくも寂しい事じゃ」
「もう、御父様……私に婚約は——まだ早いですよ!」
そんな話題で、二人が戯れていると……
「でッ! 国王、俺達は——何の為に呼ばれたんだ!?」
「そうであった! 前回と今回の功績を讃えて、何か褒美を授ける。
何か欲しい物はあるか? あるなら好きな物を言え、用意しよう」
「マジすッか!? 何でも良いんすッか!
だったら、俺は馬が欲しいすッ」
「良かろう……だったらキバお主には、馬を一年分授けよう!」
「馬を一年分って、何すッか!?
馬刺しすッか!? 馬刺しなんすッか?
俺、普通の馬が良いすよ!!!」
そして、キバの褒美は馬に決まった。
続いてエリアルは……
「私は、普通にお金で良いわ……一番分かりやすいし。間違いもないでしょう」
「あい、分かった。エリアル、お主には褒美として金貨を授けよう」
「やったー!
こっちが正解よ。キバ、分かった」
「くそー……お金さえあれば、確かに馬も買える。正解は、そっちか……」
そして、最後に……
「カエルのフロックよ! お主は、何を望む。
さぁ、好きな物を言え……お主が今回の一番の功労者だ! 何だって叶えてやろう」
「だったら……王女を貰う」
「王女を……我、最愛の娘を欲しいと申すのか——お主は!!!
一つ聞くが……娘を手に入れて、どうする気だ!? 魔物のお前が……王座にでもつくつもりか?」
「いや、そんな物には興味がない。
俺は、ただ今の王女なら魔王を誘き出す餌になると思って、だから王女をくれ!
何でも良いと言ったのは、そっちだからな」
「フロック! なんで!? アンタは、また話をややこしくするの!!!」
「だって、今の王女なら痩せて綺麗になったから魔王軍の良い餌になるんだよ! 見た目の含めて……」
「言い方! そうかも知れないけど……ダメに決まってるでしょ!
何の為に、魔王軍から姫様を助けたのか分からないでしょう。
アンタ魔物なんだから……」
「俺は、勇者だ!!!
それに、昔は良く王女を嫁に貰って欲しいって者が後を絶たなかったんだぞ!」
「知らないわよ。そんな妄想……」
すると、王様が……
「今回の褒美の件は、無かったことにする……」
「「「そんなぁ〜〜〜……」」」
「アンタのせいよ! フロック——」
「兵士達よ! 今回の話を無かった事にする為に、この者達の首を即刻はねよ——」
「ヤバい! 逃げるわよ。フロック、キバ……」
「姉さん! 俺、動けないすッ!!!」
「フロック、キバをお願い!!!」
「騙しやがったな! このくそ国王!!!」
「アンタやめなさい! 状況が悪化するから」
そして、三人は命からガラ城から逃げお失せた。
*
それから、何の音沙汰もない日々が過ぎた。ある日……
「ねぇ、フロック……」
「あ?」
「あのさぁ〜……最近、色んなことが多くて忘れていたけど——ダンジョンに入った時に会ったお爺さんの事を覚えている?」
「……ああ、居たな。じいさん! それがどうした?」
「それがどうした? じゃなくて、あのタイプの不思議な人物って言うのは、基本的ダンジョン創造主とかでダンジョンを攻略もしくは、出る際に力を認められて! 仲間になるパターンのやつじゃないの? 普通は!?」
「そうなのか?」
「いや、分からないけど……今後、ダンジョンに行く予定とかある?」
「全くないな。 だって、二人とも変身できるし隠れる必要が無いからな!」
「いや、変化出来るって言っても! 私は、カエルにでしょ。逆に危ないわよ……」
「だったら、行ってみるか!? ダンジョン。
暇だし……」
「そうね。行きましょうか」
そうして、二人はダンジョンに向かった。
*
ダンジョンに到着すると、二人が巨人の部屋から助けた冒険者達が……あの時助けてくれた冒険者を探していた。
その者達に、フロック達は話しかけると……
「何してんだ!? お前ら……また、性懲りも無くダンジョンに挑むつもりか?
やめとけ、やめとけ! お前らじゃ巨人のエサになるのがオチだ」
「げッ……お前は、くそカエル! うるさい。お前には、関係ないあっちに行け!!!」
「心配してやってるのに、なんて言い草だ! お前らがピンチになっても、もう助けてやらないからな」
「お前になんか助けてもらか! バカが——俺達は、この前助けてくれた冒険者を探しているんだ。分かったら、あっちに行け!」
すると、エリアルが……
「ねぇ、貴方達は覚えていないかも知れないけど……この前、あなた達を助けたのは間違いなくフロックよ!」
「そんなはずない。私は、ちゃんと顔を見たもの……こんなブサイクなカエルじゃ無かったわ!!!」
「そうだ! 俺も薄らと覚えている。
助けてくれた冒険者は、男の俺から見てもかなりのイケメンだった。
だから、こんなカエル野郎のはずがない」
「確かに、そうね……。
フロックもあの時の姿とかなり違うからね。分かったわ! フロック、この人達に——あの時の姿を見せてやりなさい!」
「めんどくぜーが……しゃーねぇー分かったよ!!!」
そう言うと、フロックはあの時の人の姿へと変身……
「おまえ……『その顔は……』」
カエルの姿にイケメンの顔……それを見た冒険者達から湧き上がる怒りの感情。
「ふざけんじゃないわよ!!! 私達の恩人を侮辱するなんて!!! 気持ち悪い!!!」
「このクソが……人をおちょくるのも大概にしろ!!!」
「いや、この顔には見覚えあるだろ!?」
「あったとしても、そんな気持ち悪い姿のはずがないでしょ!!! 私を助けてくれた王子様は、すらっと長い手足のイケメンよ!」
あの時の助けたフロックの姿は、美化されていた……
「いや、本当に俺だって……」
「うるさい黙れーーー!!! アンタなんて、私が地獄に送ってやる! サンダーボルト!!!」
「ウギゃあぁぁぁァー!!!」
女性冒険者のサンダーボルトを食らったフロックは、煙を上げその場に倒れると……
冒険者達の怒りはおさまったのか、何処かに行ってしまった。
「…………なんで…………なんで……本当に、助けたのは俺なのに……しかも、あの時の姿のままじゃないか…………どう言う事だよ! エリアル!?」
「私にも、何が何だか分からないわ! きっと、あなたは人に感謝されない体質なのね」
「そんな体質あるかーー!!!」
そんな事を話しながら……冒険者達と別れた二人は改めてダンジョンに入る事にした。
そして、難なく巨人の部屋へと到達……
「本番は、これからね……」
「なぁ〜エリアル、頼みがあるんだけど……
この階層は、お前の新しい技で一気に突破してくれない……そした、次の階層は俺が頑張るから」
「ええーーー!!! とは、言ったけど……
確かに、ここは私が突破して次の階層をフロックに任せた方が賢明な判断かも知れないわね。分かったわ……ここは、私が頑張るわ!」
「やったー! これで楽チンちんだ!!!」
そう言うとフロックは、小さくなりエリアルの胸元に飛び込んだ!
「な……ちょ……何処に入ってんのよ! このエロガエルが!!!」
エリアルは、フロックを捕まえると地面に叩きつけた!!!
「ゔべぇッ……
何すんだ!!! この人でなし……」
「あんた、その言葉——意味わかって使ってるの? てか、普通に考えて女性の胸元に飛び込むバカがいるか!!!」
「基本的に小さくなったら、そこがセオリーかと思って……」
「いや、普通は頭か肩でしょ!?」
「そうなのか? 男達の普通は、胸元と決まってると思うが……まぁ、いい今回は頭で許してやろう」
「許すも何も無いわ! 早く行くわよ」
エリアルは、そう言うとフロック特製のあの薬を飲み干すと……カエルに変身する。
そして、全身から微弱な魔力を放出すると体全体に電撃を纏わせる。
「新技……【電流ひつまぶし!】」
「そんなダサい名前にしないわよ! 技名は、後で考えるから。行くわよ! フロック、しっかり捕まってなさい……」
そして、電撃を纏ったエリアルは身体能力が大幅に向上して、電光石火で一気に巨人の階層を駆け抜けた。
途中、ボロ雑巾! モップ犬に見つかるも足元をジグザグに走り躱すと……これも一気に振り切った。
建物を出で外に出ると、巨人の父親に見つかり砲弾みたいな弓矢がいくつも飛んで来たが……その時にはフロックが大きくなり【水千手観音】を使い弓矢を受け流した。
しかし、移動はエリアルに任せているためにフロックはエリアルの腰に自分を舌で巻き付けると……
「気持ち悪い……アンタの舌も背中も、なんかヌメヌメする」
「仕方ないだろ! 俺だって、舌がピリッピリッするの我慢してるんだ。お前だって、我慢しろ!」
そうこうしているうちに二人は、五階層に入った。
その頃には、エリアルのカエル化は解けていた。
しかし、問題なく……そこからは、フロックを先頭に【水千手観音】で敵を一掃しながら、ゆっくりと進んだ。
「ねぇ、フロック……何で!? あんた、倒した虫達を食べているの?」
「この術は魔力と体力をとてつもなく消費するから。こうやって、食事とMPポーションを取り続ける事で持続させているんだ!
この前もこうやって、ここを切り抜けたんだ!」
「へぇ〜……その時は、もちろん私の事は丁寧に運んでくれたのよね?」
「勿論だともエリアルくん。ちゃんと俺が、お姫様抱っこで——丁寧に運んだぞ!」
「それは、ありがとう。
でも、一つ聞いて良いかしら……私、今——アンタの後ろを歩いていて、アンタの食べカスと唾液が凄く地面に落ちているのよ!
これって、抱っこしていた私にかからなかった……?」
「…………」
「かからなかった? って、聞いているのよ」
「かからなかっ……た!」
「ねぇ……私が、目を覚ました時に——貴方かが言った『洗っていた』って言うのは、この事!?」
「ちがう……」
「アンタね! 人が意識を失っている時に、なんて事をしてくれてんのよ!!!」
そう言いながらエリアルは、後ろからフロックの首を締め出した。
「やめろ……エリアル……じゅつが……解ける解ける……」
「アンタが悪いんでしょ!!! 私は、誇り高いエルフなのよ。モンスターの唾液と虫まみれ!!! もう……こんなんじゃ……お嫁に行けない……」
「こんなモン……今までと、比べると大した事ないぞ……だから、手を離せ……」
「えっ……これ以上の事が、あったって言うの……」
すると、エリアルのフロックを掴む腕に——よりいっそう力が入る。
「殺してやる! アンタを殺して私も後を追うわ!!!」
「やめろ……! 心中なんて……俺は、お前の事なんて好きでも何でもない。
出来れば、好きな人としたい!!!」
「殺してやる!!!」
*
そんなこんなで、二人は五階層を抜けた。
そして、安全地帯の湖に体を洗う為に——二人はプカプカと浮かんでいた……
「……少しは、落ち着いたかエリアル」
「……ぇぇ……取り乱して、悪かったわね。
色々と想像したら……気持ち悪くて、パニックになってしまったわ……」
「そうか……そうか……まぁ、あれだ! もし、お前がお嫁に行けなかったら……俺が貰ってやる!」
「冗談よね……」
「冗談だ……」
「やっぱり……」
「…………エリアル……」
「なに……?」
「オシッコしていい? なんか……開放的で、オシッコしたくなっちゃった」
「ダメに決まってるでしょうがぁ!!! 汚いわね! 何考えてんの! 外でしてきなさい!!!」
「ちッ……分かったよ」
そして、二人は湖から上がると……食事を取る事にした。
「ねぇ、アンタって元は——人間だったのよね? 人間だった時も、そんな感じだったの?」
フロックは、さっき捕まえた虫をムシャムシャ食べながら答えた。
「いや……くちゃクチャ……昔は、クチャクチャ……こんなに、クチャクチャ……人と話す事は、クチャクチャ……なかった。クチャクチャ……」
「ちょっと待って! 食べ終わってからで良いわ……アンタのそしゃく音が気持ち悪いから」
そして、食事が終わると……
「よしッ! 行くか!!!」
「いや、待ってよ! アンタの昔の話は?」
「えっ!? あぁ……あんまり話す方じゃ無かったと言っただろ! それだけだ」
「他にも、何かあるでしょう? 昔の仲間の事とか……」
「ああ……昔の仲間ね。
無口だったから、ほとんど話さなかったが……エルフとドワーフで、いつも喧嘩していたから途中の街でおいて行った。
その後、敵と戦って死んでカエルに転生した。それだけだな……」
「今はとは別人ね……アンタが無口なんて、想像もつかないわ。
しかも、仲間を置いて行くなっんて……普通しないわよ!」
「その時の俺は、仲間たちに何て別れを告げれば良いのか分からなかったから……そうしたんだな。
まぁ、今思えばリーダーなのに無口な俺のせいでアイツらは、いつも喧嘩していたのかも知れないな……」
「まぁ、エルフとドワーフは——もともと仲が悪いから貴方とは、関係無しに喧嘩はしていたと思うから、気にしなくて良いと思うわ!」
「それなら、良かった。
まぁ、俺の話はこんなモンだ! 先を急ごう」
「ええ、そうね。早く! あのお爺さんを探さないとね」
そう言って、二人は先を急いだ……
*
*
*
そして、ダンジョンの最深部に到着すると……
「ここが最深部なの……? 何にもないところね」
そこは、ただ広いだけのゴツゴツした岩が有るだけの部屋……
そして、部屋の中心には壇上があり! その上には宝箱が一つ置かれていた。
「なぁ、エリアルぅ〜宝箱を見てみようぜ!」
「そうね……。あのお爺さんは、出てこないのかしら。それとも、本当にダンジョンとは関係ない人だったのかしら?」
エリアルがそんな事を考えているうちにフロックは宝箱を一人で開けて見ていた。
すると、フロックからは禍々しいオーラが立ち込めて……雄叫びと共に、己の魔力をぶちまけた!!!
「ヴぉぉおぉぉぉーーー!!!」
「ど……どうしたの!? フロック……」
「ヴガァァーーー!!! ふざけるなァー!」
そして、エリアルはフロックに近づくと……宝箱の中身を確認してみる。
その中には【スカ】と書かれた紙切れが一枚入っているだけであった……
「ふざけてる……死ぬ思いでダンジョンを攻略した冒険者の気持ちをもて遊んでいる。この行為は、許されるべき悪の所業だ!
俺は必ず! あのジジイを見つけ出し。この行いを必ずや後悔させてやる……!」
「また、ギトギトのヌルヌルにするんでしょ。
お爺さんのギトギトのヌルヌルになんて見てらんないからやめなさいよ……」
「俺は、絶対に許さない!!! ヴォーぉーーーーー!!!」
「うるさい! もう、迷宮の主人も出て来ないし——帰りましょう」
「俺は、必ずや迷宮の主人を見つけ出してやるー!!!」
「分かった、分かった! また、今度ね……」
エリアルが、フロックをそう宥めて一度ダンジョンから出る事になった。
そして、二人が居なくなったダンジョンの最深部の部屋では……
「ちょっとした遊び心。ジョークのつもりじゃったのに……あんなに怒るなんて、こわッ!
しかも、なんじゃ! あのカエルのモンスター私に匹敵するほどの魔力量を秘めていたゎ……どう言う事!?」
白髪の老人は、涙目になり。煙を上げて元の姿に戻って行く……
「本当は、友達になりたかったのに……どうしよう……。
次に見つかったら、間違いなく殺されるゎ……ゔぅ〜……」
そう落ち込む白髪の少女は、次にフロック達に会った時にどうなるかは、まだ少し先の話……
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